TOOLS & FIELD NOTES / RAPID PROTOTYPING

買う前に、
作れないか考える。

3Dプリンタの知識がまったくない状態で、Bambu Lab A1 miniを買いました。公開データを選び、印刷し、実際に使う。完成品を買う以外に、自分の暮らしへ合う形を試してから決める選択肢が増えました。

2026.09.01 / Hironori Yamane

公開データからフックを3Dプリントし、ロードバイク用品や壁面収納、洗面用品へ展開する試作工程の図

Bambu Labに興味を持ったのは、3Dプリンタそのものを売っていたからではありません。

初心者が公開データから欲しいものを選び、難しい設定を一つずつ理解していなくても、印刷を始められるところまで仕組みが用意されていました。

高性能な機械だけでなく、初めて使う人が実際に物を作れるところまで設計する。

その仕組みを体験したくて、3Dプリンタを買いました。

勘所がないから、最高峰を選ばなかった

釣りやキャンプの道具なら、価格の違いがどこへ現れるか、ある程度は分かります。

一方、3Dプリンタは、何を基準に比べればよいのかさえ分からない領域でした。

私は普段、中途半端なものを買い直すより、最初から自分にとっての最高峰を選びたいと考えます。

けれど今回は、その基準を使いませんでした。

知識のない状態で高性能な機種を選んでも、必要な性能と、使わない性能を判断できないからです。

まずはエントリーモデルのA1 miniで、この世界の勘所をつかむことにしました。

最高峰を選ぶ前に、何をもって最高とするのかを知る必要がある。

最初に作ったのは、プリンタを便利にする部品だった

最初に印刷したのは、部屋の収納用品ではありません。

フィラメントの小さなゴミを受ける部品。コードが無理に曲がらないように保護する部品。プリンタを掃除するための部品。

3Dプリンタそのものを使いやすくする道具でした。

別の商品なら、メーカーがオプション品として販売していても不思議ではありません。

ところが3Dプリンタの世界では、利用者が必要な部品を公開し、別の利用者が自分のプリンタで作ることができます。

製品を買ったあと、不便を我慢するか、追加商品を探すのではなく、自分で必要な形を出力する。

機械だけで完結せず、利用者が機械そのものを改善していく。その価値観が新鮮でした。

暮らしにぴったり合うものは、売っていない

現在は、自分で3Dデータを設計しているわけではありません。公開されているデータから、用途に合いそうなものを選んで印刷しています。

それでも、既製品だけを探していた頃より、選択肢は大きく増えました。

01 / RIDE

ロードバイク用品

サイクルコンピューター、靴、ヘルメット一式を、一か所へまとめる壁掛けツール。

02 / WALL

SKADISの拡張

IKEAの壁掛け収納へ、使うものに合わせたフックや台座を追加するパーツ。

03 / ORGANIZE

場所別の収納

洗面、キッチン、ガジェット周辺に合わせた、小さな収納と整理用品。

置きたい場所の幅。掛けたいものの形。すでにある収納との組み合わせ。

条件が少しずつ違うため、店頭に並ぶ汎用品では、あと数センチが合わないことがあります。

以前なら、近い商品を探し続けるか、少し使いにくいまま我慢していました。

今は、物を購入する前に「公開データから作れないか」を確認するようになりました。

データがあっても、同じようには完成しない

公開されているデータを選べば、毎回きれいに印刷できるわけではありません。

使い始めた頃は、フィラメントが詰まり、表面が荒くなり、思った形へ仕上がらないことがありました。

原因は一つではありません。

フィラメントが湿気を含んでいる。プリンタの掃除が足りない。印刷速度が形に合っていない。同じデータでも、周囲の条件によって結果が変わります。

この感覚は、釣りに似ています。

同じ場所、同じ仕掛けでも、潮、天候、時間、道具の状態が違えば結果は変わる。うまくいかなかった原因を一つずつ見て、条件を揃えて、もう一度試します。

データが正しくても、条件が揃っていなければ、同じ結果にはならない。

数時間の印刷を、生活と共存させる

印刷するものによっては、完成まで数時間かかります。

プリンタを置いているのは寝室の近くです。日中だけで終わらない印刷では、機械の動作音と夜の生活を両立させる必要がありました。

そこで、防音を目的にエンクロージャーを追加しました。

印刷できることだけでなく、いつ、どこで、どのくらい動かすのかまで考えなければ、道具は使い続けられません。

性能の問題ではなく、生活の中へどう置くかという運用の問題です。

印刷して初めて、分かることがある

公開データには、完成イメージや寸法が載っています。

それでも、実際の大きさ、手を伸ばしたときの使いやすさ、取り付けた場所との相性は、印刷して使ってみなければ分かりません。

合わなければ、別の公開データを探す。印刷条件を変える。もう一度作り、比べる。

01 / 見つける

解決したい小さな不便を見つける

02 / 選ぶ

条件に近い公開データを選ぶ

03 / 作る

まず一つ印刷して形にする

04 / 使う

実際の場所で大きさと動きを確かめる

05 / 試し直す

条件やデータを変えて最適を探す

この流れは、新規事業の試作と同じです。

資料の上では成立していても、実際に使われる大きさや手順、使い勝手は、形にして初めて分かります。

最初から正解を作ろうとせず、まず使える形にする。現実へ置き、違和感を見つけ、次の案を試す。

試作の目的は、一回で完成させることではありません。

考えているだけでは分からないことを、早く見つけることです。

作れることが、買い物の基準を変えた

3Dプリンタは、毎日動かしているわけではありません。

必要なものが出てきたときに、公開データを探し、作れそうなら印刷します。

使う頻度より大きく変わったのは、物を買う前の考え方です。

欲しいものが見つかったとき、すぐに購入するのではなく、自分の条件に合うものを作れないか考える。

既製品を選ぶだけだったところへ、自分で形を作る選択肢が加わりました。

3Dプリンタが増やしたのは物ではなく、選択肢でした。

TOOL USED IN THIS ARTICLE

Bambu Lab A1 mini

3Dプリンタの勘所がない状態から始めるために選んだエントリーモデルです。現在は公開データを利用し、収納用品や壁掛けパーツを不定期に印刷しています。造形品質には、フィラメントの湿度、清掃状態、印刷速度などの条件が影響しました。

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考えている案を、まず使える形にする

新規事業や業務改善の案を、資料の中だけで完成させず、実際に使える小さな試作へ変えます。現場へ置いて違和感を見つけ、条件を整え、次の案を試すところまで伴走します。

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