TOOLS & FIELD NOTES / LOCAL WEB OPERATIONS

AIで作れるサイトと、
現場で運用できるサイトは
別物です

地方企業や自治体のWeb制作では、見た目や技術より先に、公開環境と更新方法を決める必要があります。能登町の移設案件で分かった、完成後に困らないための話です。

2026.07.30 / Hironori Yamane

AIで作るWebサイトと、現場の公開・更新環境をつなぐ設計イメージ

AIを使えば、以前より短期間で、見栄えのよいWebサイトを作れるようになりました。

文章を考える。デザインを作る。コードを書く。公開用の画面まで仕上げる。ここまでは、かなり速くなっています。

ただし、Webサイトには見落とされやすい問題があります。

作れることと、公開できることと、現場で更新し続けられることは別です。

これは、能登町のWebサイト移設案件で、改めて実感したことです。

サイトはできていた。でも、そのままでは置けなかった

能登町の案件では、すでにWebサイトが存在していました。記事や支援情報を掲載でき、管理画面から内容を更新できる構成です。

見た目だけを見れば、普通に動いているサイトでした。ところが、町役場が管理するサーバーへ移設しようとすると、そのままでは公開できないことが分かりました。

もとのサイトは、Node.jsやデータベースを使う構成でした。一方、移設先の町役場サーバーでは、次の制約がありました。

つまり、サイトは完成していても、町役場の環境には置けません。家は建っているけれど、土地の条件に合わず、そのままでは移築できない状態です。

AIで作れる、サーバーに公開できる、現場が更新し続けられるの三段階
図1:作る、公開する、運用する。三つがそろって初めて完成する。

AIは「作りやすい構成」を選びやすい

AIへWebサイト制作を依頼すると、Node.js、React、データベース、クラウドサービス、管理画面、外部サービス連携など、現在よく使われている技術を選ぶことがあります。

これらは、決して悪い技術ではありません。開発しやすく、機能も追加しやすく、うまく使えば非常に便利です。

ただし、AIが作りやすい構成と、現場が運用しやすい構成は同じではありません。

地方企業や自治体では、昔から契約しているサーバーを使い続けている、更新はFTPで行っている、社内や役場内にエンジニアがいない、担当者が数年ごとに異動する、新しい月額サービスを簡単には増やせない、といった事情があります。

AIや制作者にとって便利でも、現場にとっては扱えないことがあります。

AIや制作者が作りやすい条件と、現場が運用しやすい条件の比較
図2:どちらか一方ではなく、AI都合と現場都合の両立を設計する。

デザインより先に、公開環境を確認する

Webサイト制作では、最初にデザインの話をしがちです。色をどうするか。写真をどう見せるか。トップページをどうするか。スマートフォンでどう見せるか。

もちろん、どれも重要です。しかし、公開環境の確認を後回しにすると、完成後に作り直しが発生します。

能登町の案件でも、先に公開先、利用可能なプログラム、データベースの有無、更新担当、ファイルの設置方法が分かっていれば、最初から別の構成を選べました。

Webサイト制作では、デザインの前に「置き場所」と「更新方法」を決める必要があります。家具を買う前に、部屋の広さと玄関の幅を測るようなものです。

能登町では、サイトそのものより運用を作り直した

町役場のサーバー環境を変えることは、簡単ではありません。新しいサーバーやクラウドサービスを契約すれば、技術的には解決できるかもしれません。

しかし、契約、費用、権限、セキュリティ、担当者の習熟など、新しい運用が増えます。

そこで、現行サイトをそのまま移すのではなく、町役場の環境で続けられる方法を考えました。

スプレッドシート入力から公開ファイル生成、FTPアップロード、既存サーバー公開までの能登町更新運用
図3:既存環境を変えずに、担当者が更新を続けられる流れを作る。

この方法であれば、町役場の既存サーバーを変えず、担当者はスプレッドシートへ入力でき、データベースを新設せず、公開前に生成ファイルを確認できます。

最新技術を使う構成と比べると、少し遠回りに見えるかもしれません。しかし、現場で続けられない仕組みは、どれだけ高機能でも良い仕組みとは言えません。

Webサイトは、納品したときではなく、更新できたときに完成する

Webサイトは、制作会社が完成画面を見せたときに終わるものではありません。公開後には、情報を追加したり、修正したり、担当者が変わったりします。

担当者が迷わず更新でき、担当者が変わっても引き継げること。それが本当の完成条件です。

管理画面があっても、操作方法が複雑なら使われません。自動化されていても、止まったときに直せなければ続きません。制作者しか触れない構成なら、制作者との契約が終わった瞬間に止まります。

Webサイトは、完成品ではなく運用品です。

制作前に確認したい5つのこと

01

どこへ公開するのか

02

その環境で何が使えるのか

03

誰が更新するのか

04

どうやって更新するのか

05

制作者がいなくなっても続けられるか

この5点が決まらないまま制作を始めると、見た目は完成しても運用で止まります。

最新技術より、現場で続く技術を選ぶ

私は、新しい技術やAIを使うこと自体は好きです。実際、Web制作でもAIを使い、設計や実装を速く進めています。

ただし、新しい技術を使うことが目的ではありません。目的は、必要な情報が届き、現場が無理なく更新を続けられることです。

場合によっては、最新の管理画面より、スプレッドシートの方が適しています。複雑なデータベースより、生成したHTMLファイルの方が適していることもあります。

AIを使うからこそ、何でも新しくするのではなく、相手の環境に合わせて技術を選ぶ必要があります。

発注前に、この3つだけ聞いてください

このサイトは、現在契約しているサーバーへそのまま公開できますか。

公開後は、誰が、どの画面やファイルを使って更新しますか。

制作者がいなくなった場合も、社内や別の会社へ引き継げますか。

この3つに明確な答えがあれば、完成後に困る可能性は大きく下がります。

AIで作れることと、現場で使えることの間を設計する

AIによって、Webサイトを作る速度は大きく上がりました。一方で、公開環境、担当者、権限、更新方法までは、AIが自動で解決してくれません。

必要なのは、AIが作れるものを、現場が使い続けられる形へ変換することです。

Webサイトの制作・移設を、運用まで含めて設計する

地方企業や自治体の既存環境を確認し、制作後の更新や引き継ぎまで含めたWebサイト設計を行っています。新規制作、既存サイトの移設、更新方法の見直しについてご相談ください。

Webサイトの制作・移設について相談する