TOOLS & FIELD NOTES / REAL-TIME DECISION

走り終わった後の
データでは、遅い。

160kmのセンチュリーライドへ向けた練習中、100kmを走っている途中でサイクルコンピューターの電池が切れました。Garmin Edge 850へ替えて分かったのは、ロードバイクで必要なのは結果を記録する数字ではなく、走り方をいま変えられる判断材料だということです。

2026.09.02 / Hironori Yamane

バッテリー切れを起点に、給水、補給、上り、危険箇所を先読みしながら一定のペースで完走するロードバイクの図

160kmを走るセンチュリーライドへ、初めて参加することにしました。

本番へ向け、まず100kmを走る練習をしていたときです。

それまで使っていたGarmin Edge 130の電池が、走行の途中で切れました。

スピードや距離を表示できないわけではありません。必要な機能はありました。

けれど、160kmを走り切る前に止まるなら、本番の道具としては使えません。

性能表の数字ではなく、これから走る時間に耐えられることが、買い替えの条件になりました。

必要な時間まで動き続けることも、性能の一つです。

最高峰ではなく、軽さと性能の均衡を選んだ

買い替えるなら、最上位モデルも考えました。

私は、釣り道具のように価格が感覚へ明確に表れるものでは、中途半端に買い直すより、自分にとっての最高峰を選ぶことがあります。

ただ、ロードバイクでは、機材の価格だけで走りが決まるわけではありません。

本体が大きく重くなれば、画面やバッテリーは強くなります。一方で、自転車へ載せて長い距離を走る道具としては、軽さも性能です。

そこで、最上位へ振り切らず、バッテリー、画面、機能と軽さの均衡が取れたEdge 850を選びました。

約8.7万円は安くありません。

それでも、本番の途中で使えなくなる不安を抱えず、走りながら必要な情報を見続けられることを優先しました。

気持ちいいときほど、速すぎる

特によく見ているのは、スピードとケイデンスです。

走っていて気持ちがいいときほど、スピードは上がります。

一方、きつくなってくると、ペダルを回す速さであるケイデンスが落ちます。

ロングライドでは、序盤に体力を使いすぎないことが重要だと、ライド仲間に教わりました。

スタート直後は体が軽く、前へ進みたくなります。けれど、そこで気持ちのまま速度を上げれば、後半へ残すはずの体力を使います。

スピードとケイデンスを見ることで、感覚だけでは気づきにくい変化を、その場で確認できます。

SPEED

はやる気持ちを抑える

気持ちよく走れている序盤ほど、予定より速くなっていないかを見る。

CADENCE

疲れを先に見つける

きつさを我慢する前に、ペダルの回転が落ちていないかを見る。

PACE

最後まで一定にする

一瞬の速さではなく、160kmを通して走り続けられる配分へ戻す。

数字を見るのは、速さを証明するためではなく、走り方を戻すためです。

給水してからではなく、忘れる前に知らせる

画面が大きくなり、視認性は劇的に向上しました。

情報を見るために目を凝らす必要がなくなり、走行中に確認すること自体が苦痛ではなくなりました。

加えて便利だったのが、設定した時間に、音と一緒に水分補給や補給食を知らせる機能です。

ロードバイクでは、喉が渇いてから水を飲み、空腹を感じてから食べても、回復が間に合わないことがあります。

走ることへ集中していると、給水や補給を忘れます。気づいたときには、すでに脱水や消耗が進んでいるかもしれません。

通知は、起きた問題を報告するのではなく、問題になる前に次の行動を促します。

見えない先を、走る前に判断できる

危険箇所が近づけば通知され、上りへ入ればクライミング画面へ切り替わります。

この先どのくらい登るのかが分かれば、いま使う力を調整できます。

停止と再走行も検知するため、休憩後に記録の再開を忘れないよう、毎回ボタンを押す必要もありません。

Edge 850には、ほかにも多くの機能があります。

正直に言えば、そのすべてを使い切れてはいません。

ただ、必要だったのは、機能の数を使い切ることではありませんでした。

長い時間動く。走りながら読める。給水と補給を先に知らせる。危険や上りを、到達する前に伝える。

自分の走りを変えられるタイミングで、必要な情報が届くことでした。

いい機材は、練習の入口にもなる

高い機材を買っただけで、速く走れるようになるわけではありません。

ロードバイクは、釣り竿以上に、本人の練習が結果へ表れます。

一方で、いい機材を使うと、それだけで乗りたい気持ちは上がります。

自分の走りが見えるようになり、どこで速くなり、どこでケイデンスが落ちたのかが分かると、次の練習で試したいことが生まれます。

結果として、練習量も少しずつ増えました。

以前のサイクルコンピューターは、走行を記録する飾りに近かったのかもしれません。

Edge 850へ替え、初めて、数字を走り方へ使えるサイクルコンピューターになりました。

後から届く正しい情報より、いま届く判断材料

走り終わったあと、スピードが上がりすぎていたと分かっても、使った体力は戻りません。

給水を忘れていたと記録されても、走行中の脱水は防げません。

危険箇所を通過したあとに通知されても、安全な進路を選ぶ判断には使えません。

走行後に届く記録と、走行中に給水、補給、上り、危険箇所を先読みできる情報の比較図
図1:情報は、行動を変えられる時間に届いて初めて判断材料になる。
01 / 先を知る

上り、危険、給水のタイミングを先に捉える

02 / いまを見る

速度とケイデンスから現在の状態を確かめる

03 / 変える

力、ペース、補給をその場で調整する

04 / 続ける

最後まで一定の走りを維持する

これは、仕事のデータも同じです。

集計が正確でも、意思決定が終わったあとに届けば、報告にはなっても判断材料にはなりません。

数字を増やすより先に、誰が、いつ、何を変えるために見るのかを決める必要があります。

一秒を削る世界では、判断材料のリアルタイム性が結果を変えます。

データの価値は、正しいことだけではなく、まだ行動を変えられる時間に届くことです。

TOOL USED IN THIS ARTICLE

Garmin Edge 850

160kmのセンチュリーライドへ向け、Edge 130のバッテリー不足をきっかけに選びました。軽さと性能の均衡を重視し、現在はスピード、ケイデンス、給水・補給通知、危険箇所、上りの情報を走りながら判断へ使っています。

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数字を、行動を変えられる判断材料にする

集計項目を増やすのではなく、誰が、いつ、何を変えるために見る数字なのかを整理します。問題が起きたあとに報告する仕組みから、現場が先回りして判断できる運用へ変えます。

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